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2018.10.05 (Fri)

【妻】物語

ここ数年、ほとんどの家事をこなし、母を支えてきた父ですが、この数ヶ月の母の変化はあまりにも急激で、それまでは思いもしなかったことが次々と起こる日々でした。

私たちは戸惑いの中に取り残されたような気持ちで過ごしてきました。

そして、とうとう父の口から「限界だ」という言葉が出てくるようになりました。

私も、今申し込んでいる近所のホームに空きが出たら、もう、ホームにお世話になった方がいいんじゃないかと思うようになりました。
ここなら、家から歩いて10分だから、私たちも入りびたれるしね、と。

でも、そんな日はまだまだ先のことだと思っていました。

ところが、先日、ケアマネさんから「ホームに空きが出ました」と、連絡が入りました。
え?
もう?


いざ、そう言われてみると・・・




揺れます。
父も私も、グラグラです。

私は先日、’家で母の介護をしていたけれども、食改善で認知症がずいぶんよくなった’ という方のお話を聞き、その食改善の中身も聞いてきて、
「よし!私がたくさん料理して、作り置きして帰れば、父も母も健康アップじゃない?」
なーんて思っていたところだったので、
なおさらです。

「ホームかぁ」
都留で雑穀を刈りながら、涙がポトポト落ちてしまいます。

父も同様で、「もう少しがんばれる」と言い出します。

でも、ケアマネさんは、「ここを逃すと、またいつ空きが出るかわからないですからねぇ。本当に大変になったときに、どこにも入れないという事態も生じかねないです」と。

うーん。うーん。うーん。
毎日ぐるぐる堂々巡りの日々。

結局、父と兄と私で何度も話し合い、「今回は見送ろうと」と結論を出したのでした。



ところが・・・
数日後、母が何日かにわたり、リハビリパンツ(要はおむつ)を脱いでしまい(寝ながらもぞもぞお尻を掻いたりしているうちに脱いでしまうようです)、その上でベットでおしっこをしていまいました。しかも、一日は日に2度も…。

父、一気に疲れが噴出します。
だって、シーツやブランケットや母のパジャマ下着を洗うだけで半日、いや、一日終わってしまうような日々が続くのです。干す場所もなくなっていくし、シーツだってふとんだって足りなくなる。

しかも、その合間にご飯を作り、掃除をし、母の着替えを手伝い、薬を分けて飲ませ、薬を塗り、ご飯を食べるのを見守り、歯を磨かせ、などなど、さまざまな仕事が待っています。

「やっぱり、無理かもしれないねぇ」
この数日の大変さが決定打になりました。

むろん、私の住む都留に来てもらうことも考えました。
でも、父と引き離す訳にもいかず、だからといって、父も都留に来ちゃったら、友達を一から作り直すことになり、そんなしんどいことはとても無理。
そんなじゃ、父までボケちゃう。

結局、ホームにお世話になることが、今、選びうる最善という結論に至りました。

そして、母にその話をするのは私の役目となりました。
そのとき交わした会話。
うろ覚えですが・・・

「いつもデイケアに行ってるサンヒルズあるでしょ?そこに一部屋空きが出たんだって。お父さん、最近、すごく大変そうだからさ、お母さん、ちょっとホームに入ってみるの、どうかな?」
「それはかわいそうだね」
「誰が?お母さんが?」
「うん、お母さんが」
「そうだね~。かわいそうだねぇ。でもさぁ、お父さんも大変で、かわいそうじゃない?」
「そうだねぇ。でも、こっちがもっとかわいそうだねぇ」
「そうだねぇ。でも、ホームではご飯や着替えやシーツの洗濯とかもしてもらえて、お風呂も入れてもらえて、それでお父さんが毎日会いに行けば、いいんじゃない?」
「寂しいねぇ。」

(聞きたくなかった言葉が出てきてしまいました)

「寂しいねえ。私も寂しいよ(私、大泣き、母、クール)。でも、私も帰ってきたら毎日ホームに行くし、お母さんが家にしょっちゅう帰ってきてもいいし、大変なことはホームの人にやってもらうけど、後はあまり変わらないかもしれないよ。」
「でも、3人で…」
「うん、3人で?」
「3人で…ケーキが食べれないね?」

(あんまりケーキのことばかり言う自分がおかしかったのか、自分でも笑っちゃいながら、母、深刻さを救ってくれる一言)

「食べれるよ!ケーキ。また買ってくるから3人で食べよう。ホームでも食べれるよ」

(私、母の言葉に少し救われます)

「そう?じゃあ、そうしようかねぇ。」

(私、えー?!そこ?そんなんでいいの?と、心の声)

「お父さんもイライラしなくなって、今よりもっと優しくなるかもしれないしね。」
「お父さんがイライラするのは、かわいそうだねぇ」
「そうだね。それに、イライラしてたら、お母さんも嫌だしね」

「どういう風になるのかね」
「たぶん、ご飯とか、トイレとか、着替えはホームの人が手伝ってくれて、お風呂も入らせてもらえるよ。家だとお風呂入れてあげられないけど。あとは、昼間は私たちが会いに行くし、どっちみち、お母さん、家にいても寝てばっかりいるから、そんなに変わらないかもよ(笑)」
「そうだねぇ。一人で暮らしてみるかね」

(私、「一人で暮らす」という言葉にドキリ)

「いきなりずっとじゃなくてさ、試しに2泊ぐらいやってみる?」
「やってみようかねぇ。」

(私、ここまでたどり着いてホッとすると同時に、申し訳ない気持ちがむくむくと湧いてきます)

「ごめんね…」
「なんで?」
「なんでって、だって」
「こっちが、ごめんねだよ」
「こっちって?」
「・・・」
「お母さんが?」
「うん」
「なんでお母さんがごめんなの?」
(母、宙を見て、言葉を探しながら)
「一人でいなくなっちゃって、ごめんね」

…って。
お母さん…。
その神がかった言葉、どこから探してきたの?

ドクターとか、母との接点が少ない人は、ちょっと早口で(いや、ゆっくり話してくれているんだけど、母にとっては間〔ま〕が短い)慣れないことばかり聞くから、お母さん、素っ頓狂な答えをしちゃって、もう、なぁんにも分かってないように思われてるみたい(あの受け答えじゃ、私だって、何も分かっていないと受け取ると思う)。

だけど、お母さん、本当はなんでも分かってるんだよね。本当に大切なことは全部、わかりすぎるほど分かってるんだ。


娘は、わかっているお母さんが、とても誇らしくて、とても哀しいです。

お母さんが全て分かっていることが、そして、その上で、「そうだねぇ」とホームに入ることに同意してくれることが、無性に哀しいです。

私たちの切なさ、寂しさ、つらさ、もどかしさ、ホームでの暮らしが続くかもしれないこと、誰もが一人で死んでいくこと、ぜんぶぜんぶ、なんでもわかってる。

お母さん、ごめんね・・・。




ホームお試しショートステイ、一日目は、私が朝から夕方まで付き添いました。

母といろいろポツポツ話しながら出てきた言葉は

「ホームに入っても、トイレにちゃんと行けるようになったら、家に帰ろうね」

後で聞くと、夕方から私とバトンタッチした父も、同じことを言ったのだとか。
母は「そうしよう」と言ってくれたとか。

母に期待を持たせるようなことをして、却って残酷かな?
とも思いました。
これからV字回復するとは思えないし。

でも、ホームでのリハビリで少し足腰が鍛えられて、夜トイレに行けるようになれば本当に家にまた帰れるし、そうでなくても、おむつに慣れて、脱がないようになってくれれば、後のことはなんとかなるんじゃないか。


「トイレにちゃんと行けるようになったら、家に帰る」

これは、私たちがすがるようにして紡ぎ出した物語でした。


実現するかもしれないけれど、
結果的に嘘になってしまうかもしれない。

でも、たとえ嘘であっても、
人は、物語が必要なんだと、心からしみじみ思った一日でした。



その後も、数日のうちにいろいろなことが起き、私たち家族は散々揺れに揺れました。

あんなに決心したのに、翌日には「やっぱり、今回は見送ろう」となってみたり。
いやいやいやいや、まったく家族は愚かですね。
冷静な判断なんてできないです。


そうしてバカみたいに、あっちに行ったりこっちに行ったり、その度にケアマネさんを困らせて、結局、私たちが出した結論は、まずは、部屋を借りてみる、というものでした。

幸い住居型の有料老人ホームは、特養と違って、部屋を借りてもベッタリ住まなくても良いそうなのです。

だから、まずは部屋を借りてみて、週何日かだけステイするというところから初めてみようと。

そうすれば、私たちがいよいよ窮地に追い込まれた時は、ホームに頼ることができるし、もしも、母がどうしてもホームに慣れないようなら、部屋を返上することもできる。

そんな物語を、もう一度紡ぎ直し、ようやく新しい一歩を、恐る恐る踏み出してみようとしています。



7月の母。










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19:19  |  介護  |  トラックバック(0)  |  コメント(1)

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 |  2018.10.08(月) 19:02 |  |  【編集】

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